【アナリストのジレンマ】2枚替え時のセッター位置、あなたはどう入力する?


試合終盤、攻撃力やブロック力を維持・強化するために監督が切るカード、「2枚替え」。 前衛のセッターと後衛のオポジットを、ベンチのオポジットとセッターに一気に入れ替えるこの戦術は、現代バレーボールにおいてポピュラーな采配のひとつです。

しかし、PCに向かってリアルタイムで入力を行うアナリストにとっては、少し頭を悩ませる瞬間のひとつでもあります。

Data VolleyやVolleyStationといった主要なスカウティングソフトは、基本的に「セッターの位置(S1〜S6)」を基準にローテーションを認識し、ポジションを決定する仕様になっています。 では、2枚替えによって「セッター」が2人入れ替わってしまった時、ソフトウェア上のセッター位置は新旧どちらに合わせるべきなのでしょうか?

実はこの問題、世界中のアナリストの間でも意見が分かれる「永遠のテーマ」です。今回は、現場で主流となっている「2つのスタンス」と、それぞれのメリット・デメリットを整理してみたいと思います。

スタンス1:実働セッター派(控えセッター基準)

2枚替えが起きた瞬間、ソフトウェア上のセッター位置を「新しく入ってきた控えセッターの実際の位置」に変更して入力する、という考え方です。例えば、本来S4だったローテーションが、控えセッターが入ることでS1ローテーションに変化する、という処理になります。 ソフトウェアは基本的にこちらを提案してくるため、この方法を採用しているアナリストの方が多いかもしれません。

  • 【メリット】実際の攻撃構造とデータが完全に一致する 新しいセッターが後衛にいれば、ソフトウェア上もしっかりと「セッター後衛(前衛3枚)」として記録されます。これにより、その瞬間のセット配分(パイプ攻撃の有無やライトへの依存度など)や、控えセッター個人のトス傾向を正確にトラッキングでき、2枚替えという采配がどれだけ機能したかをダイレクトに検証できます。
  • 【デメリット】ローテーションの連続性が崩れる 途中でセッター位置を変えてしまうと、「このセットのS4ローテーション」のデータの中に、突如として別のローテのデータが混ざることになります。結果として、「チームとしてS4のローテーションのサイドアウト率が良かった・悪かった」というマクロな分析の純度が下がってしまいます。

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スタンス2:ローテーション維持派(スタメンセッター基準)

2枚替えでスタメンセッターがベンチに下がっても、そのまま「本来スタメンセッターがいるはずだった位置(=交代して入った控えオポジットの位置)」をセッター位置として入力し続ける、という考え方です。

  • 【メリット】データの連続性が保たれる S1からS6まで、チームとしてのローテーションの流れが途切れません。「チームとしてこのローテーションの時にサイドアウト率が高い/低い」といった、マクロな視点でのチーム力分析がノイズなく、非常にスムーズに行えます。
  • 【デメリット】コート上の実態とデータが乖離する データ上は「S4(セッター前衛)」のままですが、実際には控えセッターは「S1(後衛)」にいます。ソフトウェアはこれを「前衛2枚」として処理しがちなため、実際の「前衛3枚」の配分などミクロな分析を行う際、アナリストの頭の中でデータを補正して読み解く手間が発生します。

まとめ:正解は「チームが何を求めているか」

どちらの考え方にも明確なメリットがあり、「こちらが絶対に正しい」というものではありません。

純粋な論理で言えば、セット途中でローテーションの構成が変わることは望ましくないため、「スタンス2(ローテーション維持)」が理にかなっています。しかし、「次のセットでも2枚替えをした構成のままスタートした」「入れ替わった状態のまま終盤を長く戦った」というケースでは、あえてセッター位置を変えてしまった方が、分析のためのサンプル数が稼げるという見方もできます。

重要なのは、「監督やコーチが、どのような視点でデータ・映像を見たいか」です。 チーム全体のローテーションごとの収支を重視するなら「ローテーション維持派」が適していますし、2枚替えという特定戦術の実行度や詳細な配分傾向を重視するなら「実働セッター派」が適しているでしょう。

現場の目線でわかりやすく言い換えるなら、「ローテーション別のサイドアウト映像を作った時、2枚替えの映像がS1・S6・S5の括りに出てくるのか、S2・S3・S4の括りに出てくるのか、チームとしてどちらがすっきりするか」という話でもあります。

ちなみに個人的には、データの連続性を重視して「スタンス2(ローテーション維持派)」にすべきだと考えています。セッターコールなど、セッターの番号を打ち直す手間はありますが、それでも少なくとも同じセットの間でローテーションの構成が変わることはやはりおかしいと思います。

ソフトウェアの仕様を理解した上で、チームのフィロソフィーに合わせて最適な入力方法を選択し、カスタマイズしていくこと。それこそが、単なる「データ入力者」から、チームを勝利に導く「アナリスト」へとステップアップするための第一歩と言えるのではないでしょうか。

あなたはどちらのスタンスですか? ぜひ、『CourtEnd』のタイムラインやコメントで、皆さんの現場での工夫やこだわりも教えてください!

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