前回の講義では、プレーを「対(ペア)」で評価することで、試合の因果関係が浮かび上がるという話をしました。しかし、ここまで学んだ記号(#や=など)には、実はまだ足りない要素があります。
「誰が」「どのプレーをして」「結果がどうなったのか」という情報です。
試合後にノートを見返したとき、「+が5つ並んでいる」だけでは何も分かりません。それが10番の選手のアタックなのか、3番のサーブなのか。どの方向への攻撃だったのか。この情報がなければ、データは「事実の断片」に過ぎず、次の練習に活かすことができないのです。
今回は、DataVolley・VolleyStationが共通で採用している「スキルコード」の体系を学びます。ソフトを使わなくても、この体系を知っておくだけで、あなたの記録の解像度は格段に上がります。
1. 1つのプレーは「3つの情報」で完成する
アナリストがプレーを記録するとき、頭の中では常に次の3つの情報を同時に処理しています。
| 情報 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 誰が(Who) | 選手の背番号 | 10 |
| 何を(What) | スキルの種類 | A(アタック) |
| どう(How) | 評価記号 | + |
これを組み合わせると、10 A +。「10番がアタックを打ち、良い結果(相手を崩した)」という意味になります。
これだけで、1つのプレーの「事実」を正確に記録できます。
2. スキルコードの一覧を覚える
スキルの種類には、次のような略称(コード)が割り当てられています。これらはDataVolley・VolleyStation共通で使われている世界標準のコードです。
| コード | スキル名 | 記録の対象 |
|---|---|---|
S | サーブ(Serve) | サーブを打った選手 |
R | レセプション(Reception) | サーブを受けた選手 |
E | セット(sEt) | トスを上げた選手 |
A | アタック(Attack) | スパイクを打った選手 |
B | ブロック(Block) | ブロックに跳んだ選手 |
D | ディグ(Dig) | スパイクを拾った選手 |
Eがセットなのは、Sがサーブに使われているためです。最初は少し戸惑いますが、すぐに慣れます。
3. 「どこへ」という第4の情報──ゾーン番号
「誰が・何して・どうなった」の3要素に加えて、実際のソフトでは「どこへ(Where)」という情報も記録します。コート上を9つのエリアに分けた「ゾーン番号」を使って、打球の方向や落下点を記録するのです。
コートを正面から見たとき、番号は次のように割り振られています。

たとえば、「10番がゾーン4からゾーン5(相手のバックレフト)へアタックを打ち、決まった」という記録は次のようになります。
10A#45
(実際はこのような入力をすることはほぼありません。入力レベルが上がってくると、アタックコードを使用します。アタックコードには初めから「どこから」の情報が入っているためです。なので、実際は10PV5#(Aの入力も必要なし)といった入力になり、実際のコードとしては「10AM#PV45」という生情報として記録されます)
この「方向情報」があることで、「このスパイカーはクロス方向(ゾーン5・7)の決定率が高いが、ストレート(ゾーン1・9)はほとんど打たない」という傾向分析が初めて可能になります。
4. まず「誰が・何を・どう」から始める
「ゾーン番号まで記録しないといけないのか……」と感じた方、安心してください。最初から完璧な記録を目指す必要はありません。
初めのうちは自分のチームの「誰が(番号)・何を(スキルコード)・どう(評価記号)」の3要素だけで十分です。
手書きノートで練習するなら、次のような形で記録してみましょう。
【第1セット サーブ記録】
3 S -
10 S +
7 S =
10 S # ← エース!
この4行だけで、「3番のサーブは結果が悪く、10番のサーブは効果的で、7番はサーブミス。10番は1本エースを取った」という事実が記録されています。あとから集計すれば、「誰のサーブが最も効いているか」が見えてきます。
ゾーン番号は、記録に慣れてきた段階で少しずつ追加していけば十分です。まずはこの3要素で、スラスラと記録できる状態を目指しましょう。
5. コードを「声に出して読む」練習
実は、スキルコードを使いこなす最大のコツは「声に出して読む」ことです。試合の映像を見ながら、プレーのたびに次のように実況してみてください。
「7番・サーブ・プラス(7 S +)」
「12番・レセプション・シャープ(ダブルプラス)(12 R #)」
「4番・アタック・マイナス(4 A -)」
このリズムが身につくと、試合中でも脳の処理が追いつくようになります。記録が「考える作業」から「反射的な動作」に変わる瞬間が、アナリストとしての大きな一歩です。
6.練習として使える「VOLLEY CODER」
そんな簡単なコードの仕組みを遊びながら学べるのが、スマホ用バレーボール入力練習アプリ「VOLLEY CODER」です。

今回学んだ基礎はVOLLEY CODERのレベル1の部分に当たります。コードを理解して実際のPCのキーボードに入力する部分が一番、習得が難しいスキルであるので、これができたら、すぐ入力ができるというわけではありませんが、コードを頭に思い浮かべるスピードを速めるにはうってつけの練習方法だと思います。
今回のまとめ
- 1つのプレーは「誰が(番号)・何を(スキルコード)・どう(評価記号)」の3要素で記録する。
- スキルコードはS・R・E・A・B・Dの6種類。世界標準で、DVもVSも共通。
- さらにゾーン番号を加えると、打球の方向まで記録でき、傾向分析に使える。
- 最初は3要素から。「声に出して読む」練習で、記録を反射化しよう。
次回(1-5)は、同じプレーでも「いつ」起きたかで意味が変わる、ローテーションという「コンテキスト」の概念に踏み込みます。「なぜあのローテーションになると崩れるのか」を、データで可視化する方法を一緒に学んでいきましょう。
