西田選手が右腕につけているバンドは何? ウェアラブルデバイスの可能性を考える

西田選手の右腕につけているのはなに?

2026ネーションズリーグ男子が絶賛開催中されています。
日本代表・西田有志選手の右の二の腕に、黒い細いバンドが巻かれているの気づいた方は多いかもしれません。

公式に発表されているわけではないので推測の域を出ませんが、形状と装着位置から、あれはWHOOP(ウープ)というウェアラブル端末ではないかと見ています。

WHOOPは、まだ日本での発売はされていませんが、画面を持たないことを最初から狙って作られた珍しいウェアラブルデバイスです。
時刻の表示も通知の受信もできません。
できるのは24時間365日、装着者の身体データを取り続けること。 心拍、心拍のばらつき、呼吸、皮膚温度、睡眠の各段階を、毎日休まず計測できます。 手首ではなく、二の腕への装着できるのもWHOOPの特徴のひとつです。

これらのデータを集めることによって、今日の身体がどれだけ回復できているか、今日どれだけ身体に負荷をかけたか、睡眠の質がどの程度か、といったことを数値として出すことができます。

西田選手が装着しているのがWHOOPかどうかは、結局のところ本人の言及がなければ確定できません。
ただ、装着しているのが何であるにせよ、トッププレーヤーが日常的にリカバリー系ウェアラブルを身につける時代に入ったことは間違いありません。

ちなみに同様のものはUSAのショージ選手やマクヘンリー選手も装着していました。

現状、選手が身に着けて、それをチームのパフォーマンスのために活かすためのデバイスとして、ジャンプ回数、高さを測定するVert、加えて心拍数なども測定できるカタパルト(USAなどが使用)が一般的ですが、これらは練習、試合時のみに身に着けて測定を行うものです。

WHOOPは24時間身に着けることで、身体の変化をよりモニターすることができることでしょう。今後、チームでこのようなアームバンドをつけるようなチームも出てくるかもしれません。
カタパルトなどはまだデバイスが大きく、転がる動作なども多いバレーボールでの普及は今一つといったところ。もしこのWHOOPサイズで加速度、さらには位置情報などもモニタリングできれば、分析分野でも大いに活用できるかもしれません。

ウェアラブルデバイスの可能性を示唆するある研究

ただの紹介で終わっても仕方ないので、選手の体調を確認するという観点ですこし面白い研究があったので、紹介します1
それは、スマートウォッチで集めたコート外のデータから、コート内のパフォーマンス(アタック効果率)を予測するという試みです。
読み解くことで、自分たちのチームにどう活かせるかを考えるヒントが得られるかもしれません。

どんな実験だった?

arXiv(無料で読めます)
https://arxiv.org/abs/2503.08100

これはアメリカのStevens Institute of Technologyでウェアラブルデバイスに関する研究を主に行っている「CARE-AI Lab」によって行われました。

アメリカの大学男子バレーボールチームの選手14人に、Fitbit(市販のスマートウォッチ)を26週間装着させ、 さらに毎日2回、朝と夜にアンケートに答えました。
「今日の疲労感は?」「気分はどう?」「睡眠の質はどうだった?」といった質問に1〜7段階で回答するアンケートです。

研究チームが使ったのは、本番シーズンが始まる前の12週間ぶんのデータだけ。 このデータから、シーズンを通して活躍する選手と伸び悩む選手を区別できるかを調べたようです。

成績の指標として使われたのは、アタック効果率。
ごくごく大雑把に言えば、これがシーズン開幕前の体調データとリンクするかどうかという研究です。

結果として何がわかったか

シーズン前のデータだけで、4人中3人の的中率で活躍する選手・伸び悩む選手を区別できたという結果でした。 完璧な予測ではありませんが、14人という小規模実験としては「実用化に向かう手応えがある」と言える数字です。

さらに重要なのは、どの時期のデータが予測に最も効いていたかです。 答えは、シーズン直前の集中合宿期間でした。 本番直前10日間の心拍や睡眠のデータが、その後のシーズン成績と最も強く結びついていました。

つまり、シーズン直前の身体の整い方が、その後の数か月のパフォーマンスを左右する可能性が高い。 本番直前1〜2週間で「整っている選手」と「整っていない選手」が分かれ、その差がシーズンを通して続く、ということをこの研究は示唆しています。


現場に取り入れるなら?

紙とペンから始められるコンディション収集

もちろん、選手の状態を常にモニタリングするために、ウェアラブルデバイスを常時つけられればいいですが、コストの観点から言えば、簡単なことではありません。
ただこの研究のデータ元も2つに分けられます。 ひとつは Fitbit が自動で取った客観的データ、もうひとつは選手のアンケート回答です。 注目したいのは後者で、アンケートだけでも予測に貢献していました。

紙に5項目(睡眠の質、疲労感、気分、ストレス、筋肉痛)を10段階で記入する。 これを午前の練習前と午後の練習後にやってもらうことができれば、この研究に近いことはできます。 スプレッドシートに記録していけば、月単位のトレンドが見えてくるでしょう。

もちろん、これはS&Cやトレーナーの仕事かもしれませんが、スタメンの主観的なコンディションと、その試合のスタッツを比較する。 こうしたセクションをまたいだ蓄積が、コーチへの提言の材料になりえます。

この研究の限界も把握しておく

最後に、この研究の限界について触れておきます。

一つ目は、対象が大学男子14人と少ないことです。 中学・高校、女子、シニアなど、別の母集団でも同じ結果になるとは限りません。

二つ目は、評価指標がアタック効果率のみだったことです。 アタッカーには有効でも、セッターやリベロの貢献度はこの研究では扱われていません。 ポジション別の指標設計は、各チームのアナリストの工夫が必要な領域だといえるでしょう。

三つ目は、運用の難しさです。 26週間データを取り続けるには、選手側の協力が必要不可欠です。 研究では週25ドルの報酬を支払って協力を確保したようです。 学校現場で同じ仕組みを動かすには、別の動機づけが要ります。 データを取って終わりではなく、選手にもフィードバックを返す仕組みを最初から設計しておくべきでしょう。


アナリストの仕事は広がりえる

DataVolley と VolleyStation を扱えること。 これは今後もアナリストの基本といえるでしょう。 しかし、それだけでは足りない時代に入ってくるように思えます。

コート上のデータだけでなく、コート外のこういった生体データも、S&Cコーチやトレーナー、チームドクターといったスタッフと連携を取りながら、チームの勝利のために役立てていく。

スカウトマン、アナリストにはチーム内で数値化できるものは、どんなものでも扱える能力が問われるようになってくるかもしれません。

明日から全員にウェアラブルデバイスを配るのは無理でも、紙のコンディションシートからは始められます。 それを集めて、スカウトデータと比べる。
コートの中でも、コートの外でもデータと向き合える人材を目指していきましょう。

  1. Ozolcer, Zhang, Bae「Predicting Volleyball Season Performance Using Pre-Season Wearable Data and Machine Learning」arXiv:2503.08100(2025年3月)
    Stevens Institute of Technology ↩︎

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